病院薬剤師が主人公の漫画、アンサングシンデレラ。
普段、脚光を浴びることのない薬剤師が漫画になった!とネットでも薬剤師界隈でも話題になっています。
1巻の帯に書いてある三択クイズも掴みとしては上手いですね。
全国で1日に発行される処方せんのうち、医療事故の疑いがあるものは何枚?
A 900枚
B 8000枚
C 60000枚
ちなみに答えは本編中に書かれています。
そんなアンサングシンデレラを病院薬剤師の僕が読んでみたので、レビュー記事にしたいと思います。
アンサングシンデレラ1巻の率直な感想
率直な感想としては、すごく面白いです!
ストーリー展開はよく考えられていて、惹き込まれます。
しかも一話完結型なので、飽きずにスラスラ読めます。
正義感が強くて熱意のあるヒロインと仕事がデキる先輩。
その先輩のヒロインへの対応はちょっと冷たいけど、ピンチになると助けてくれる。
・・・なんとなく見覚えのある構図だなと思ったら、解剖医のドラマ「アンナチュラル」に似ているんですね。
ドラマ化されても人気が出ると思います。
コマ割りも大きめで、画の描き込みもスッキリして読みやすいです。
雰囲気としては、少女漫画に近いかな?
とにかく、読んでいると主人公のみどりを応援したくなります。
そして先輩薬剤師の瀬野さんがカッコよくて、女性ならキュンキュンするのではないでしょうか。
また、本編中には「薬剤師あるある」がふんだんに散りばめられていて結構笑えます。
病院薬剤師の視点から
まず、薬局薬剤師ではなく、病院薬剤師を主人公にしているのは、医者とのやりとりやカルテの閲覧、注射薬の扱い、救急対応など、ネタが多いからでしょうか。
この先、オペ室とかも出てくるかもしれません。
僕としては調剤薬局の仕事内容を知りたかったし、調剤薬局の方が一般の人にも馴染みがあるとは思うんですよね。
まぁ、それは置いといて。
途中、羽倉くんが「腰椎横突起骨折」と発言するところで、読み仮名が「ようついよことっき」になっていたのが残念でした。
正しくは「ようついおうとっき」と読みます。
整形外科担当の羽倉くんが間違えているように見えてしまい、ちょっとカッコ悪い気が。。。
それから、萬津病院は近年では珍しく、外来も院内処方のようです。
ただ、その設定が異常です。
外来1200人に対して、薬剤師10人。
これは不可能に近い数字、いや、絶対無理です。
昼食も取らずに走り回っても患者からはクレームの嵐になるでしょう。
みんなすぐに音を上げて辞めていくはずです。
実際には20人以上欲しいレベルなので、かなり現実離れした設定です。
世間に「そんなに少なくてできるものなのか」と思われたら、ちょっと癪ですね。
それともう1つ。
医療用語の注釈がちょくちょく出てくるのですが、その一部がやや不親切。
例えば、ALTとASTの説明が「アスパラギン酸アミノ基転位酵素」とかフルネームで書いてあるだけで、どういった意義の検査値なのかが書いてありません。
なので、一般の人には「なんだそれ?」と思われてしまうでしょう。
ターゲット読者が薬剤師だけならいいのですが(それなら注釈も要らないけど)、医療に携わっていない人もターゲットにするなら、この辺りにも配慮して欲しいですね。
アンサングシンデレラの登場人物
アンサングシンデレラの主な登場人物を紹介します。
◆葵みどり(主人公の薬剤師)
萬津病院に勤務する新米の女性薬剤師。
好奇心旺盛で、正義感が強く、思ったことはハッキリ言うタイプ。
◆瀬野(先輩薬剤師)
みどりにとって頼れる先輩薬剤師。
知識量も判断能力も長けていて、医師にも正論で立ち向かう。
◆刈谷(みどりの上司)
規則に厳しく、合理主義。
◆羽倉(同僚薬剤師)
整形外科担当薬剤師。
人付き合いがやや苦手。
◆豊中(救急看護師)
瀬野と仲がよく、みどりに関係を疑われている看護師。
アンサングシンデレラというタイトルも絶妙
アンサング(unsung)とは、
①認められない価値を持つ
②有名でない/称賛されていない
という意味です。
つまり「世間には認知されていないけど、人知れず頑張っている」という意味が込められているのでしょう。
あまり人の目に触れない薬剤師の仕事を端的に、的確に表しています。
しかも「シンデレラ」が不遇のヒロインを連想させます。
ちなみに「縁の下の力持ち」を英語にすると「unsung hero」なので、それをもじったのかもしれませんね。
まとめ
アンサングシンデレラは薬剤師の仕事をよく知らない人でも十分楽しめると思います。
そして、この漫画を通して薬剤師の存在意義を知ってもらえたら嬉しいです。
とにかく医療ドラマが好きな人や、医療従事者は必読の漫画です。
https://assist-pharmacist.net/unsung-cinderella-drama/