最近、巷では「薬剤師の仕事は誰にでもできるから、AIに奪われる可能性がある」と言われることがあります。
薬剤師に限らず、AIの技術革新は目まぐるしく進み、将来的には人間はほとんど仕事をすることがなくなるかもしれません。
そこに到達するために人間の仕事はだんだんとロボット(AI)に置き換えられていくでしょう。
最近では車の自動運転の開発が進み、文字通り「自動車」になろうとしています。
これが将来普及すれば、タクシー運転手やトラック運転手などの仕事はなくなります。
また自動運転によって、カーシェアリングのシステムが充実すれば、車を所有するという概念すらなくなり、ディーラーもなくなるかもしれません。
そんな進歩を続ける人工知能によって、医療業界で生き抜くために今後必要なことを考えてみましょう。
薬剤師に必要なのは単なるコミュニケーション能力ではない
AIの対人業務(コミュニケーション)の障壁が克服されたら、きっと薬剤師も仕事を奪われるでしょう。
なにせ、世の中には2万を超える薬剤が存在し、それらの情報を全て把握している人間は1人もいません。
その点ではAIに勝てるわけがないのです。
処方せんの通りに調剤して、教科書通りの説明をするだけならロボットでもできますからね。
では薬剤師にはどのような能力が必要になのでしょうか。
薬剤師に必要な能力とは
薬剤師のコミュニケーション能力は大切ですが、もっと大切なのは、観察力、質問力、情報活用力だと思います。
順番に見ていきましょう。
観察力
患者の身体的な変化(むくみや内出血斑など)や表情・反応などから患者の気持ちや状態を見極める必要があるでしょう。
会話を通して患者の日頃の悩みを聞き出したり、そこから問題点を見つけ出したりする能力を磨かなくては、薬剤師としての存在意義はなくなります。
また処方箋から医師の意図を読み取るという観察力(洞察力)も必要になるでしょう。
質問力
次に質問力も磨く必要があります。
患者の中には薬剤師との会話を面倒くさがる人もいます。
そんな場合でもなるべく的確に最小限の質問を投げかける必要があります。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンそれぞれを上手く使い分けながら話を進めることが大切です。
情報活用力
日頃から勉強をして、知識を蓄えることも大切ですが、もっと大切なのはその知識や情報をどのように活用するかです。
どの基準、どのガイドラインと照合して患者の状態を見極めるべきなのか、どの薬の選択が最適なのか、など自分の知識から引っ張り出してくる情報の選択力が問われます。
AIが代行する医療業務は増えていく
僕は医師の診断に関してはAI化は比較的近い将来に実現すると思っています。
診断のアルゴリズムさえできていれば、それに沿ってある程度判定できるからです。
今でも診療ガイドラインなどでは、フローチャートを使った診断アルゴリズムはいくつも存在しています。
これらをまとめ上げれば不可能ではないはずです。
そうすれば、医師による診断のバラつきもなくなり、全ての人が標準治療を受けることができるようになります。
また誤診や見落としなどのリスクも下がるでしょう。
ただ、医師の利権の問題で実現しない可能性もありますが・・・。
医師は処置や手術を担当
診断がAI化されても、処置や手術は技術的にまだまだ難しいでしょう。
なので前段階として、診断はAIが行い、処置や手術およびその説明は医師が行うという時代が来る可能性はあります。
ただし、画像解析に関してはAIではまだ難しいと思われるので、レントゲンで骨折の診断をしたり、その骨折の程度(転位など)を診断するのは医師になると思われます。
医療業界のAIでは置き換えにくい部分
医療業界では人と接しながらケアをする仕事はまだまだAI(またはロボット)に置き換えにくいと思います。
現在のところ、コミュニケーション力と考察力はまだまだ人間にはかないません。
たとえば、診断アルゴリズムが整備されたとしても、悪意のある人間が薬剤の転売目的で目的の薬剤を処方してもらうための「問診回答マニュアル」のようなものが横行する可能性もあります。
それを見極めるのはやはり人間の目が必要になるでしょう。
薬剤師の仕事はなくなるのか
将来的には、ほとんどの仕事がAIやロボットに置き換えられていくでしょう。
それは誰でもできる仕事や単純作業から優先的に置き換わっていきます。
薬剤師の仕事はすぐにはなくならないかもしれませんが、単純作業しかしていない薬剤師は淘汰されていきます。
近年では薬学部が乱立していて、人口は減少の一途をたどっています。
いずれ仕事は減るのに薬剤師の人数は増えるというジレンマです。
個人的には薬剤師に限らず、なくせる仕事はなくせばいいと思っています。
電話交換手のように、必要のなくなった仕事を守る必要は全くないわけです。
科学技術で実現できることはわざわざ人間がやらなくてもよいのです。
それならAIをメンテナンスする仕事など、新たに生まれる他の業務に移行すればいいだけの話ですからね。
最近、服薬指導以外は全自動になっている「ロボット薬局」ができて話題になりましたね。
1つ言えることは、これからわざわざ険しい薬剤師の道を選ぶのはあまりおすすめしないということです。